3週間後、大和はリハビリの甲斐あって、ゆっくりなら自力で歩けるようになっていた。

 仕事に行くと、大和は、歩いていた。
「おはよう。」
「おはよう。」
 軽く挨拶のみした。

 退院の話が上がっていた。
 1週間ほど、リハビリを続けて、問題なければ退院することになる。

 私は、複雑な気持ちだった。
 歩けるようになったのは嬉しいが、退院すれば、会う機会がなくなる。
 でも、退院したら、会わないほうがいいような気もしていた。
 
 私は、大和への想いが大きくなっていることに気づいていた。
 1週間後、大和の退院日。

 私は、仕事だったため、担当看護師として、見送ることになった。

「よかったね。退院おめでとう。
 気をつけて生活してね。無理はしないように。」
 大和に伝えた。

「ありがとう。またな。」
 大和は、それだけ言って帰って行った。

 私は、2度と会わないような気がして、寂しくはなったが、
『それでいい。』
 と、自分に言い聞かせた。
 数日後。

 私は大和のことが忘れられずにいた。
 マンションでじっとしてられず、出かけることにした。

 商業施設に行ったが、何を見ても楽しくなく、心がザワザワしていた。

 夕方、私は、海に行くことにした。
 
 大和の店の前を通った。臨時休業だった。

 展望台に行った。
 夕方の春の海は穏やかだった。
 
 あまり人が来ないところで、車の音もあまり聞こえない。

 静かな海の音だけが、私の耳に響く。
「優奈。」
 私の名前を呼ぶ声に、驚いた。

「びっくりした。」
 私の心臓はバクバクしていた。

「ごめんごめん。そんなに驚かなくても。」
 大和は笑った。

「いや、誰か来るとは思わなくて。」
 私は、大和が来たことにも驚いていた。
 また、会えたことが嬉しかった。

「俺、時々、来てたんだ。
 まさか、優奈がいるとは思わなくて。」

 大和は、ずっと来ていたのだ。
「優奈、ありがとな。
 せっかく会えたし、お礼に飯でも行かない?」
 大和に誘われた。私は悩んだ。

「予定があるなら、また、今度でも。」
 大和は気を遣ってくれた。

「あ、いや。行く。」
 私は悩んだ末、
『大和と一緒にいたい』
 という気持ちに嘘がつけなかった。

「よかった。じゃあ、行こう。」
 近くの居酒屋に行った。
「大和とお酒を飲む日が来るとは思わなかった。」
 私は、嬉しかった。

「そうだな。お互い仕事モードの時に会ったけど、フリーのときに会うのは、中学卒業以来だもんな。」
 大和はビールを飲みながら言った。

 大和と、中学時代の友人の話をしたり、仕事の話をしたりした。

 懐かしさ、落ち着きを感じた。

「そろそろ行くか?」
 大和が切り出した。

「そうだね。」
 私も同意した。
 店を出て、海沿いを2人で歩いた。

「ここでよく話したな。」
 大和に言われた。

「そうだね。何かあるたびにここにきてて、大和も来てくれてたよね。」
 懐かしかった。

「なぁ、優奈。」
 大和の足が止まり、真剣な顔になった。

「どうしたの大和?」
 私の心がザワザワした。
「優奈、俺と付き合ってくれないか?」
 大和は言った。

 私は言葉が出なかった。

「わかってる。今更・・・って思ってるだろうけど、俺は、小学生のときから、優奈が好きだった。
 中学卒業して、離れてからも、忘れられずにいた。でも、俺は、優奈を守るために、ファンの子と付き合ってた。優奈を傷つけない代わりに付き合うことを条件に出されて。だから、優奈を振った。でも、間違っていたと後々わかった。
 だけど、何も出来なかった。俺は弱い人間だ。
 でも、再会した。優奈が店に来たときは、すごく嬉しかった。だから、もう2度と失いたくないと思った。」
 大和からの想いが伝わってきた。

 涙が出た。
 
「私を守るためだったんだ。
 私は、あの頃、大和に裏切られた気持ちがしていた。
 だから、連絡を取らなくなった。
 でも、大和を忘れることは出来なかった。
 そんな中途半端な気持ちだったから、前の旦那に浮気されたんだろうね。
 私も、大和が好き。」
 私は、今までの想いが溢れて仕方なかった。

「優奈。」
 名前を呼ぶと同時に、大和が抱きつきいてきた。

「大和。」
 私も、腰に手を回した。