「10年ぶりだね。こうやって話すの。」
 大和は言った。

「そうだね。懐かしいね。
 大和はいつからここでやってるの?」

 私の質問に大和が答えた。
「1年前。大学生のときにバーテンをバイトでやってたら、楽しくて、修行して、やっと1年前にオープンした感じ。」
 
 私は、大和を尊敬した。

「すごいね。1人でやってるの?」

「そう。」
 大和は照れてる様子だった。

「優奈は、看護師でしょ?よっぽどすごいよ。」
 私は、照れ笑いをした。 
「もう一杯下さい。」

「かしこまりました。」
 バーテンらしい営業スマイルで言った。

 世間話をした。
 懐かしい思いと、切ない気持ちがあった。
 でも、やっぱり、大和といると落ち着くのがわかった。

 2杯目を飲み干し、店を出ることにした。

「久しぶりで、楽しかった。
 じゃあ、お店頑張ってね。」
 私は、もう2度と来るつもりはなく、会うこともないだろうと思いながら言った。

「ありがとう。優奈も頑張れよ。」
 大和も私が来ないことを諭していた。

 私は、店を出た。
 私は、海へ向かうのはやめて、帰ることにした。
 新しい自分のマンションに。

 鍵を開け、今日から1人での生活。

 ウキウキしていた。
 新たな自分の門出に。

 お風呂に入り、ベッドで眠る。

 翌朝、8時頃、目が覚めた。
 カーテンを開けると、気持ちいい日差しが差してきた。
 よく眠れた。

 今日は、休み。
 いろいろな必要物品を買いに行くことにした。

 身なりを整えて、マンションを出た。
 ある程度、必要物品を購入し、カフェでランチすることにした。

 ランチを1人で食べていると、昨日のことを思い出した。

 大和に会えて嬉しかった。
 でも、会いたくはなかった。

 昔の大和、今の大和。
 変わったようで、変わっていなかった。
 
 ランチを終え、カフェを出た。

 食材を買いに、スーパーに行った。
 何も買っていなかったし、持って来なかったから、たくさんの荷物になった。

 マンションに帰り、整理整頓した。
 1ヶ月が経過した春。

 裕一から連絡がきた。
「今日、離婚届を出してきた。
 本当にごめん。げんきでな。」

 これで、裕一と正式に離婚をした。
 いろいろな手続きはめんどくさがったが、私は、旧姓の堀部に戻った。

 職場にも報告し、名札も変えてもらった。

 同僚は姓が変わり呼びにくいのか、名前で呼んでくれるようになった。
 数日後、日勤で昼休み後、リーダーに入院患者の対応を命じられた。

 入院は毎日のようにある。
 予定入院も緊急入院も。

 リーダーから報告を受けた。
「26歳、男性。膝前十字靭帯断裂で入院。
 車椅子でお迎え。
 名前は、林原大和さん。」

 名前を聞いて驚いた。
『大和?だよね。』

 カルテを開くと、生年月日も同じだった。

「わかりました。」

 車椅子で、外来まで迎えに行った。
 外来に行くと、待合室で車椅子に座ってる大和がいた。

「大和。どうしたの?」
 声をかけると、大和が苦痛の表情で行った。

「サッカーやってて、膝の靭帯切れたみたい。すげー痛い。先生が手術した方がいいっていうから、入院することにした。」

「あー、サッカーまだやってたんだ。
 私が病棟から迎えにきました。ちょっと待って。」
 
 私は外来看護師から申し送りを受け、大和のところに行った。
「じゃあ、病棟に行きます。」

「ごめんね。迷惑かけて。」
 大和が申し訳なさそうに言った。

「辛い時に、そんなこと気にしなくていいから。」
 
 病室に案内した。

「この部屋です。個室希望って聞いたのでここになります。」
 
「うん。」

 左の膝が痛いため、右足だけで立つが不安定だったため、少し支えて、ベッドに寝た。

「ありがとう。」
 大和は、苦痛表情で行った。

 そのあと、検温をし、入院説明をした。
「以上。質問何かある?」
 私は、大和に質問した。

「ううん。大丈夫。ありがとう。
 優奈、本当に看護師なんだな。」
 大和はクスッと笑った。

「ちゃんと看護師やってるよ。」
 ムスッとした。

「ごめんごめん。冗談。」
 大和は、笑った。

「あっそ。じゃあ、また、来ます。」
 私は、少しイラつきながら退室した。

 夕方、家族と本人は、医師からの手術の説明を受けた。私は、担当になったため、同席した。