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あれから6年。
俺は今、裸で気持ち良さそうに俺の隣で眠っている莉子を見つめて幸せを噛み締めていた。
規則正しい寝息が莉子のものならこんなにも心地よいものなのか。
柔らかい栗色のセミロングの莉子の髪に触れる。
ずっと、ずっと触れたくて仕方なかった。
懐かしい感触。
やっと莉子を捕まえた。
まさか莉子と別れた後、莉子が音信不通になるとは思わず、俺は焦った。
連絡アプリでもSNSでもブロックされ連絡の取りようがない。
俺には地元に友だちはいなかったので莉子を探すつてが一つもなかった。
勤めていた会社にもいないし、住んでいた家にもいない。
完全に莉子は俺の前から消えた。
俺は6年間、必死で莉子を探した。
それでも莉子を見つけられずに何度も心が折れかけた。
それでも莉子が最後に俺に言ってくれた「大好きだから別れたい」という言葉を胸に何とか耐えた。
莉子は俺が大好きだから俺と離れているだけだ。
たまたまSNSで莉子の姿を見つけた。
高級ホテルのアカウントに小さく大人になった莉子が写っていた。
可愛いあの頃の面影も残しつつ、何より大人っぽくなっていた莉子。
俺の知らない大人の女性になっていた莉子に胸が高鳴った。
やっと見つけた、と。
今度こそ逃げられないようにしなければ。
俺のことが好きでここまで本気で俺から逃げた莉子だ。
きっと普通に出会っては簡単にまた逃げるだろう。