「んんっ!?」
 突然クロウが唸り声を上げたのでリズはびくりと身体を揺らした。
(もしかして口に合わなかったのでしょうか)
 指をもじもじとさせて俯いていると、クロウが声を上げた。
「これは……もの凄く美味いな! 野菜の甘みとベーコンからでたコクがスープに移って実に美味い」
「本当ですか?」
 嬉しい感想を聞いて顔を上げると、クロウの皿は既に空になっていた。
 驚きつつも、リズはクロウに尋ねた。
「えっと。まだ、たくさんあるので……お代わりします?」
「ああ、是非頂こう」
 先程まで生気のなかったクロウの瞳には光が宿り、幸せそうな表情でスープをたくさん食べてくれている。リズはその様子に心の底から安堵した。
 スープもパンも完食するとクロウはリズの頭を撫でながらお礼を言ってくれた。
「ありがとう。リズがご飯を持ってきてくれたお陰で少し気持ちが楽になった。気分が沈んでいたけど元気になれた」
 リズはじっとクロウを眺めた。先程よりも血色が少し良くなっている。魂を吸い取られそうな程に弱っていた生気も、今は活力が戻っているように見える。彼が元気を取り戻したのは本当のようだ。
「えへへ。喜んでもらえて嬉しいです。また作って持ってきますね」
「えっ?」
 クロウは一瞬、リズが発言した内容を理解するのに時間が掛かった。だが、それを理解すると肝を潰した。
「まさか、あのスープを作ったのはリズなのか? 俺はてっきり他の誰かが作ってくれたとばかり思っていた。……改めてありがとう。本当に美味かった」
 リズが褒められて面映ゆい表情を浮かべる一方で、クロウの表情が険しくなる。
「だけどリズ、危険を冒してまでご飯を運ぶのはだめだ。司教の顰蹙(ひんしゅく)を買うことになるかもしれない」
 こっそりここに来たことはクロウにはバレてしまっているようだ。
 考えてみればそうだろう。ヘイリーが聖職者でもないリズをわざわざクロウの元へ使いに出すなんておかしい。
 リズは顔を真っ赤にして俯く。