途中披露される個人演技も(とどこお)りなく終わり、残すは再びの二人の演舞、フィナーレを飾る美しき大技の繰り返し──。

 モモが向こう側から流星の如く近付き手を放す。

 凪徒の身体の位置よりも高く飛び跳ね、通常行なわれる膝を抱えた縦回転ではなく、立ち姿のまま横に回転し、落ちる瞬間凪徒の腕をきっちり掴まえる舞は、中でも流麗で凪徒も気に入っていた。

 モモの華奢(きゃしゃ)な身体を(まと)う妖精のような衣装が、彼女を軸にして独楽(こま)のようにまとまり花開く。

 時に無人のブランコに向かって行なわれることもあるが、相手がいる方がずっと華やかな技だ。

 幾つかの大技の後にその演目が始まった。

 モモの回転は普段よりキレが良く、客席の反応もすこぶる良い。

 凪徒も自分で分かるほど集中出来ている。

 そうであった筈なのに──。



 ──杏……奈?



 端から中心へ振り子を描きながら、観客の隅にあの悪意のある微笑が見えた──気がした。

 たった一瞬のことだった。

 違う……まだ大丈夫だ……コンマ一秒だってズレてはいない。ちゃんとモモをキャッチ出来る筈──

 ──先輩!?

 けれど凪徒の視線はモモを捉えていても、その伸ばされた手には触れることすら出来なかった。

 ──!?

 モモは凪徒を見つめ、その手は助けを求めるように上方へ向けられていた。

 驚きや失望の声色を見せる観客の嘆きと共に、セーフティネットへと身を沈めていた──。