『あんた、とち狂ってるのか!? 兄貴の死んだ日に兄貴の婚約者と結婚しろなんて、良くもそんなことが言えるなっ!』

 激しさを増す凪徒の言葉に、暮と秀成も更なる驚愕の表情で固まった。

『彼岸を除いた大安の日曜が、そこだということもあるのだがね……私には逆の発想があるのさ。生まれ・死んだ日──お前が杏奈君と結ばれることで、『拓斗』も再生するんだよ。お前と言う肉体を()(しろ)としてな』

『何てことをっ……』

 さすがの凪徒も言葉半ばにして口を閉ざしてしまった。

 そしてこちら側で聞き入る三人も──。

「こ、このおやっさん、エラい怖いな……凪徒が帰りたくないのも、う、(うなず)ける……」

「は、はい……」

「……」

 暮と秀成のやり取りは、もはやモモの耳には届かなかった。

 この声の先が本当に凪徒の『場所』で、そして自分の『場所』なのだろうか?

 ──ここに戻った自分の想いに、自由は有り得るの?