「ねぇねぇ、モモたんはナッギーが好きなんでショ?」

「ナッギー……? あ、桜先輩!? ち、違うよ~……」

 慌てて否定の言葉を洩らしつつも、顔は沸騰するように熱くなっていた。

 でももう昨夜、思いっきりフラれたのだ。

 例え本音を言いたくても、誰にも言えない気持ちがした。

「えー! そう? ホントに? じゃあ、リン、ナッギーとデートしてもイイ?」

「……へ?」

 ──さっき秀成君とデートしてきたばかりのリンちゃんが先輩とデート?

 やっていることと言っていることがまるでちぐはぐなリンに、再び真ん丸の瞳を戻す。

 徐々に活気づいてきたリンの笑顔が、獲物を狙う肉食獣の表情に見え始めたのは錯覚だろうか?

「ヒデナーのことは好きだけどぉ~ちょっと物足りないんだよネー、ナッギーって結構年上ジャン? も少し大人なデート出来るかなぁ~ッテ」

「……」

 ──そ、そりゃあ、二十三歳ともなれば、あたし達よりずっと大人ではあるけれど、あのちっともロマンティストでない先輩とデートして、『それ』を見込めるんだろうか?

 そういうモモ自身も、そんな凪徒を好きであるという自分の中の「どうして好意を抱いているのか」という原因や理由に対して、明らかにし切れない不確定要素を見出さずにはいられないのだが──。