ミライさんの想いを知って、彼を信用していない訳じゃない。
そして、そんな彼に頼まれて今回ツバサとの下剋上を引き受けたミヅクさんを疑っている訳じゃない。

でも、ボクはやっぱり……。
大切な人(ツバサ)が危険な目に遭うのは、嫌なんだ。

複雑な心境のままのボク。
けれど、下剋上の準備が整ってしまう。

「シャッフル完了です。
二人とも、どうぞ正面を向いて下さい」

ノゾミさんの言葉に、クルッと楽しそうに回転椅子を回して先に正面を向いたのはミヅクさん。
そしてツバサは、なんとポケットから眼帯を取り出して……。左目を封じると、正面を向いた。
最近は眼帯をしなくても能力(ちから)制御(コントロール)出来ると言っていたけど、万が一に備えて不正だと思われる行為を避ける為の事だろう。

それは、実に彼らしい行動。
真っ直ぐで、曲がった事は絶対にしない、ボクの大好きなツバサの姿だった。

っ、そうだよ……。
今ボクに出来るのは、ツバサを信じて見守ることじゃないか。

下剋上に立ち向かうツバサの姿に、気持ちを改めて直す。
自分に言い聞かせると、ボクは拳をギュッと握り締めてツバサを見つめた。心の中で、何度も何度も「頑張れ!」って叫びながら……。

「ーーでは。下剋上、始め!!」

ノゾミさんの号令で、ついに本当に下剋上が始まった。