「目の調子が悪いから。ごめんなさい帰ります。」






きっと君はこうして今までも訪れる素敵な縁を諦めてきた。







君の目には孤独が満ちている。




一瞬で分かるほどに暗く沈んでいる。









そして。どこか懐かしさを感じる。



ずっと前からこの瞳を知っているかのよう。













「土屋?」







淡い記憶。ともに育ったものの何も知らないまま。






反応で分かった。この子を知ってる。






彼女ー山ーという懐かしい響き。







下の名前は、そうだ花だ。なんて考えているときじゃなく。




























彼女は危機感を持ったのだろうか。







明らかに動揺した彼女は踵を返し歩みを早め知らないふりをしようとしたのがバレバレだ。







「待って。」




調子に乗って疲れさすことはしたくない。






でも、どうしても彼女を放ってはおけないのだ。





出会って早々エゴ交じりの男に彼女は心を開いてくれるのだろか。





このまま引き下がるわけにはいかない。








それは俺の感情も含めて、彼女の事を知りたいと思った。






その泣きそうな目の秘密を知りたい。





小学生の時には気に留めることなく=気付かなかったのだが。





ただ一方的に好意を寄せ=今も大して変わらないのかもしれないが。





何も知ろうと思わず、土足で踏み入ることを迷惑と思っていた。





でも彼女は泣いている。





心が枯れるんじゃないかと心配になる。







でもそれはやはり俺の勝手な妄想なのかもと。







なら彼女には悪いけれどそれを確かめてからでも遅くないだろう。







半ば無理やりに(理由をつけて)理屈付け、正当化したものの。





そのまま焦って腕をつかむと。腕は白く冷たく、そして細くなっていて。






昔の面影とは遠くかけ離れている。ちょっとした不安を抱く。






だがこれぐらいの事で怯まない。



















「泣きそうな顔をしてる、」









「大丈夫か。」








忙しく回る頭より情が勝ち、何も無計画に引き留めてしまった。





こんな問い詰め方では、ただ一言「大丈夫です。」







と言われ逃げ帰ってしまうだろうと言ってから気がつく。










「迷惑だったかな。」







焦って追い打ちをかけるようにつらつらと言ってもう終わったと。





自分でも情けなく、痛々しい。








何ハタチにもなって街中で初ナンパなんて体験してんだよ、寒。




彼女は目を瞬かせ、重い沈黙を破った。




不安げで。








でもどこか吹っ切れた顔をしていて。








「嬉しいんです。」














「私へそ曲がりなので。」







君はそういって笑う。




























君の孤独を俺は知りたい。



















強く思った。