「とても綺麗です。……ですが、誕生日でもないのにいただいてよろしいのでしょうか?」

着物と蒼さんを交互に見つめていると、私の手に蒼さんの大きめの手が重なります。先ほどまで手を繋いでいたというのに、胸が大きく高鳴ってしまいました。

「今日、どうしてもあなたに渡したいんです。……着ていただけませんか?」

熱のこもった目でジッと見つめられ、拒否することなどできるはずがありません。隣の空き部屋をお借りして、早速贈られた着物に着替えることにしました。

着ていた緑の着物を脱ぎ、青い着物に袖を通します。幼い頃から茶道やお琴を習っていたため、数分ほどで着ることができました。

「失礼致します」

襖を三回に分けて開けると、どこかソワソワとした様子の蒼さんが私に目を向けました。そして、「緊張しますね」と小さく呟きます。

緊張の意味がわからず首を傾げていると、蒼さんはその手に何かを握り締めて近付いてきます。蒼さんの手が私の髪に触れ、しばらくすると離れていきます。