くどすぎず、ほんのりとした優しい甘さのそのお菓子を食べている時、私の頭にはずっと蒼さんの顔が浮かんでいました。……恥ずかしくて、欧米の方のように口にすることはできませんが。

蒼さんは私をジッと見つめていました。そんなに見つめられてしまうと、顔中が火照ってしまいます。ですが、蒼さんの顔も真っ赤に染まっていますね。

「……美鈴さんは、とてもお優しい方ですね」

蒼さんの言葉に「そんなことはありません」とやんわり否定した後、長い廊下を歩いて彼の部屋に案内されます。和モダンインテリアで統一されたおしゃれなお部屋です。

「実は、今回美鈴さんをお呼びしたのは、お渡ししたいものがあるからなんです」

障子がゆっくりと閉まると、何故か蒼さんはどこか緊張したような表情を浮かべ始めます。このような蒼さんを見るのは初めてです。

「お渡ししたいもの、ですか?」

「まずはこちらを」

蒼さんに手渡されたのは、一本の着物でした。桜の花と手毬の模様が描かれた青色の着物です。