虐待だと思ったから。
母親から離さなければ、守らなければと思った。
離したのは、体の為だけじゃなく、心の為でもあった。
離さなければ、苺美が傷付けられると思ったから。

母親と離した事で、対象が母親から雨哥へと移って行ったのだ。
知らなかった。
苺美の本当の気持ちを。
母親ほど強くはないが、可能なら
『雨哥と同じになりたい』と、苺美は雨哥へとその想いを移して行ったのだ。
母親の代わりに。

本当の苺美を知らない雨哥は、苺美を切り捨てられない。
こんな子じゃないと思ったから。
だからと言って苺美と共有する気はない。
出来ない。譲りたくない。譲れない。
琉羽だけは。
琉羽だけは絶対に誰にも渡さない。
『私だけなの…』
その言葉で埋められて行く。
『誰にも渡さない。琉羽だけは絶対に…私だけ』
その気持ちが雨哥の中の “普通” で大事な想いだった。