いつもと違う苺美の気配に、和人は苺美の体を突き飛ばした。
思いきり机に突っ込んだ苺美に「ごめん。つい」と和人が手を伸ばす。
その手を握り「和人さん!」と苺美は和人に抱きついた。
「何?どうしたの?」と苺美の体を押し、和人は苺美と距離を取る。
和人に力では勝てず、苺美の体は和人から離される。

「私もお母さんと同じになりたいの!」
告げた。伝えた。
そう。苺美は和人を好きな訳ではない。
求めているのは “母親と同じ” なのだ。
それが異常だと苺美は思わない。
感じない。分からない。
普通な事でしょ?

そしてそれは、中3の夏休みに始まり、時々起こるようになった。
昼間、2人だけになる時間に和人は苺美の家に来なくなった。
「いくら親子としてと思ってもやっぱりね…」と千里は思い、和人の気持ちを理解していた。
まさか、苺美にあの感情があるなんて分かるはずもない。
「お母さんと同じになりたい」と思っているなんて…。

そして、あの日へと繋がる。
あの日…苺美が助けを求め、雨哥が知ったあの日。
痣を見たあの日。
あの日が、全ての “闇” になったかも知れない。