「それは…」と雨哥がブレスレットを見て言うと「苺美ちゃんのだよね?」と琉羽は苺美がそれを持っていた事を口にした。
苺美のではない。
けれど【行方不明者】が持ち主だったなんて言えない。
それをどうして苺美が持っていたのか、そして血が付着したブレスレットとなり、今、ここに落ちているのか…。
どれを取っても「どうして」へと方向は向かう。
「それは…」いろんな言葉が頭の中を走って行く。
浮かぶ言葉はどれも全て伝えようとする言葉だ。
伝えて良いのか…。
伝えたらどうなる?
琉羽…。
でも琉羽に、琉羽だけには嘘は言えない。
どう伝えたら…と考えていた。

「これ、苺美ちゃんのブレスレットだよね?」と琉羽が切り出す。
雨哥は小さく頷いた。
苺美のモノではないけれど、苺美が持っていたモノだ。
琉羽は台所からジップの袋を持って来ると、その中にブレスレットを入れた。
「どうして…血がついてるの?」と琉羽がその血を見る。
あの日の苺美の姿が現れる。
雨哥の中で生き返る。

伝…える…教…える。
琉羽…“バイバイ”は嫌だよ。
あの日の苺美もこんな気持ちだった?
こんな不安な気持ちだったのかな?
そんな雨哥の体を琉羽は優しく包んだ。
今から何か大きな事が雨哥から伝えられる。
そう琉羽は感じ、その前に目の前の震える雨哥の体を抱き締めた。
そして言った。
「大丈夫だよ」
震える。
「大丈夫だよ。絶対に離れない。大丈夫。だから俺にもその震えを分けて。雨哥の不安、俺にも与えて。大丈夫。信じて」
琉羽が強く受け止める。
今から知る全てを…2人で…。
「大丈夫」と目を合わせた。
さぁ、時間だよ。