「ごめん。いいよ。無理に話さないで。大丈夫なら良いんだ。ごめんねもう…苦しまないで」
琉羽はそう言い、どこか辛さそうな雨哥の体を引き寄せた。
琉羽の温かさが雨哥の全てを包んでくれる。
全部、全部、一つになる。
ねぇ…もし…知ったら…私の事…。
「大丈夫だよ」
琉羽が全てを抱く。
「大丈夫だよ」
その声でまた胸に刺さる。

ねぇ…本当は…。
本当に…。

そして何事もなく年が明ける。
この年末年始、タキの所も静かに過ぎたようだ。
本当に何も起きない平和な日々。
その中で雨哥と琉羽は過ごして行く。

「お仕事っていつからだっけ?」
新しいカレンダーを壁に掛ける。
「6日からだよ」と琉羽は雨哥の背に言う。
「6日っと…」と雨哥はカレンダーに【琉羽 仕事始め】と書き込む。
最初の予定。
何気ない雨哥のいつもと変わらない行動に琉羽は微笑む。
「雨哥は今、依頼ないの?」
ビーズの作業台の方を見て琉羽が聞く。
「うん。今年は少ない方かなぁ。あっでも、バレンタインの依頼がそろそろ来ると思うよ」
この時期の会話。
いつもの2人。
ずっと願っていた2人だけの毎日。
苺美のいない日々。
すぐ近くにいる、あるけど現れる事は…ない。
2人だけ…。