「こ…これは?」と声が震える。
血で喉が固まり声が出しにくい。
このままだと声が出なくなりそう。
「炭酸水だから大丈夫。まずは飲む前に口の中を洗え。飲み込むなよ。キレイになるまで、キレイと感じるまで、ここに出せ。吐いても気にするな」
タキが床の網目を指さした。
冷静に床を見た。改めて認識する。
床は…底は…下水?に繋がっているように空洞になっているように見えた。

タキの言う事を聞き、雨哥は炭酸水で口の中を整える事から始める。
不思議と吐かなかった。

強い子だ…と改めて感じ、タキは雨哥に気付かれないように微笑んだ。
こんな微笑みがまだ自分にも出来るんだと、して良いのだと、してしまうのだと、タキも気付かされた。
雨哥と言う人間は、どこまで人の心を動かすのだろう…。
どうしてこんなにも愛されるのか…。
それ故に、こんな世界へと誘われてしまったのだけど…。
雨哥さえもそんな事、分からず生きている。
どうしてこんなに…それ故に…。
タキの胸に感情が戻りそうになる。
消していた部分の感情。