「あの、今、仕事」
「こっちも仕事よ。増やしてくれたわね。気付いたから良かったけど。早く!」
タキはそう言いながら手を動かして行く。
「あの…え」
次の動きで雨哥は思わずその場に座り落ちる。
タキが床で不自然に盛り上がった形のコートを一気に取り上げたから。
終わった。見られた。聞こえていたんだ。気付かれていたんだ。終わった。
琉羽の顔が浮かぶ。終わっちゃうのかな…?
「タキさん、私」
目の前のタキは次の動きを続けていた。
見てるだけの雨哥に「手伝いなさい」と言う。
終わったと思った。けれど、終わりではなく次への始まりだった。
この瞬間、始まったんだ…。次の人生が…。