音を立てないように、鍵穴に本当の鍵を挿す。ゆっくり捻る。
“カチ”と鍵が開く音はどうしてもしてしまう。
ドアを開け、玄関に入り、チェーンを掛けてから鍵を閉める。
苺美は気付いていないのか、玄関には来なかった。
中の音に耳を澄ます。
“カチャ カチャ” と聞こえた。
作品を入れているボックスの音のような気がする。
ポケットからスマホを出し【今、どこにいる?】と苺美に送ってみた。
苺美のポケットから音がする。メッセージを受信した。
苺美はスマホを手に指を動かす。
雨哥は苺美の背中が見える位置に立っていた。
その手に返事が来る。
雨哥は普段からメッセージの着信音は消している。
だから苺美から返事が届いても、苺美は気付かない。
スマホの画面には【買い物してるよ】と表示されている。
ふーん。ここ、お店なんだ。高いですよ。何をお求めで?
さぁ、どうする?