★截前(せつぜん)★
この頃の雨哥は、外出する時間を増やすようにしていた。
秋も過ぎ、ビーズの依頼内容も冬・クリスマスのモチーフに変わる。
この季節、外に出るのは寒いので、いつもならあまり外出をしない。
だが今は、苺美の行動を引き出す為に外に出る。
外に出ればそれなりにお金も使うのだけど、これから先の為に、苺美の行動を起こさせようとしている。
【今日も外出してるの?】と琉羽からのメッセージ。
この日の雨哥は、駅が見える場所にあるカフェにいた。

そのカフェは “趣味スペース” と言うコーナーが窓際に設けられており、静かな作業をする人向けに設置された一画がある。
そこで雨哥は、冬に向けてのビーズのデザインを考える事にした。
まぁ、家にいるよりは暖かいから良いか…。
飲み物代は掛かっても集中は出来るし…。
【今日も外出してるの?】の文字に微笑む。
【今日はカフェにいるよ。デザイン考えてる】
【そっか。大丈夫?】
【大丈夫。何かあったら連絡するね】
そのやり取りをこれまでも何日、何回もしている。変わらない日々。
何もない日で終わって来た。
今日もそうなると思っていた。
けれど、この日は “いつも” と違った。
“何もない” で終わらない日が今日だった。
この日、動いた。
この日から動いた。
あの日へと…。