雨哥はタキと一定の距離を保ち、追い続けた。
バレた時なんて言おうと考えながら、足を一定に出して進む。

タキは駅前にある、他より大きめの薬局に入った。
少し分かった気がした。
それでも追う。他に何か…。
タキは歌の思った通りのコーナーへ向かった。
その薬局だけ、他にもあるだろうけど、知ってるのはこの薬局だけ。
雨哥が怪我の時に塗った塗り薬が販売されているのだ。
タキはその塗り薬と、その他に幾つかの物を手早く手に取りレジに向かった。
「教えてあげれば良かったな…でも見付けたんだ。良かった」
雨哥はタキより先に薬局を出て、身を隠した。
「タキさん」と声を掛けたかったが、その言葉は心の中だけにした。
【契約書】を思い出した。
声は掛けないでおこう。
約束だから。あそこを出たくはない。
『もう少し後で帰ろう』
雨哥は近くの本屋に入った。
せっかくだ。少し普通の時間を過ごす事にする。
この日も特に苺美は動きを見せてはくれなかった。
ただタキを見掛け、普通を感じた日で終わった。