息がしずらい教室の空気。
くだらない会話は、いやでも耳に入ってくる。
「はー佐藤の顔みたら気分悪くなってきたわ」
わざとらしく甲高い声が、教室中に響き渡る。
腕を組んで私を見下ろす彼女は、木下 紗枝。
「机汚い、臭い。どうにかしてよ」
机には、油性ペンで書かれた変な落書き。
臭いのもとは、置かれていた生ごみのせいだ。
生ごみは既に捨てたし、落書きはどうにか落とそうとしたけどそんな落ちなかったし。
いや、そもそもそんな手の込んだことをしたのは……
なんて反論なんてできるわけもなく、わたしはうつむいたまま時間が過ぎることを待っている。
「ねぇ、元親友でしょ桜ー何とか言ってあげてよ」
「やめてよぉ、黒歴史じゃん」
紗枝の隣で大袈裟に笑う彼女は、哀川 桜。
“元親友”
小さいころから一緒にいた、わたしにとって家族みたいな存在だった。
まあそれは1か月前までは、の話。