違う。
こんなふうに嫌味っぽく言いたいわけじゃない。ただ悲しかっただけなのに。

私達の赤ちゃんが来てくれたことを報告しようとしていたところに、池田さんと歩いてる怜士を見て、なぜか自分でも驚くほどショックを受けた。

そう伝えたいのに、思うように言葉が出て来ない。

唇を噛みしめる私を見て、怜士は眉を顰めた。

「もしかして、俺のこと疑ってる?」

発した声は明らかに不機嫌さが漂っていて、その冷たさに身が竦む。

こんな怜士の声を聞いたのは久しぶりだ。

過去の誤解が解けて以降、彼は私をひたすらに甘やかしてくれた。

言葉でも行動でも気持ちを示してくれて、だからこそ私は過去を忘れて、今の怜士と初めから恋をやり直そうと思えたのだ。

こんなふうに醜い感情をぶつけたかったわけじゃない。

ずっと見て見ぬふりしていた不安が一気に押し寄せてきてしまい、自分でもどうしたらいいのかわからない。

本来なら今頃、妊娠を打ち明けて、幸せな未来についてふたりで笑って話しているはずだったのに。