決定的な浮気現場を見たわけじゃない。

だけど、今の私には怜士があの人とふたりで楽しそうに歩いているだけで、自分でも信じられないほどショックを受けている。

あぁ、本当に高校時代に逆戻りしたみたい。

何度こんな風に傷ついただろう。何度嫉妬に苦しんだだろう。

そのたびに怜士を嫌いだと自分に言い聞かせ、結婚を自分から断ることでちっぽけなプライドを守ろうと必死だった。

結婚する前までは、それで済んでいた。

だけどもう、私は後戻り出来ないほど彼を好きになってしまった。

想いが大きいからこそ芽生える感情は、逃げずに自分で受け止めて消化するしかない。

過去を見ないふりで切り捨てると決めたのは、私なんだから。

なんとか気力を振り絞って帰宅したものの、結局ひとりで抱えきれず、千花に電話をかけた。

私の支離滅裂な話を最後まで口を挟まずに聞き終えた彼女は、第一声にいつもの優しい声で『おめでとう』とお祝いの言葉をくれた。