【ごめん。急なトラブルで早く帰れそうになくなった。埋め合わせは必ずする。本当にごめん】

え……。
簡潔な一文を、私は呆然としながら何度も読み返した。

五分程前に送られてきていたメッセージはスタンプや絵文字もなくシンプルで、慌ただしそうな雰囲気が伝わってくる。

仕事なら仕方ない。急なトラブルはつきもので、怜士が悪いわけじゃない。

そう頭ではわかってるはずなのに、どうやって妊娠を打ち明けようかとウキウキしていた気持ちを、一気に地面に叩きつけられたような気分だった。

タイミングの悪さに、重い溜息が漏れる。

……ダメだ。気分が落ち込むと、体調まで悪くなりかねない。

気持ちを切り替えて、なにか美味しいものを買って帰ろう。この際、うんと贅沢したっていいはずだ。

なんとか自分に言い聞かせて顔を上げた瞬間、道路の向こう側からコンビニ袋を片手に並んで歩いてくる男女の姿が見えた。

長身で人目を惹く彼を見間違うはずがない。男性の方は間違いなく怜士だ。

そして隣を歩く怜士の腕を笑いながら軽く叩いているのは、以前会ったことのある女性。