本当に、ここに私と怜士の赤ちゃんがきてくれたの?

当然ながら手を当てたところで何の感覚もなく、妊娠しているという実感もない。

だけど手にした検査薬には証拠の線がしっかりと浮かび上がっていて、そわそわして落ち着かず、地に足がついていない感覚だった。

ここ最近、心の中を占めていたもやもやが吹っ飛び、嬉しくて叫びたい気分だ。

体調不良も、気温やストレスのせいじゃなくつわりだと思えば、それすらも愛おしい気がする。

何度も深呼吸して、まずは病院に行って妊娠を確定させようと近くの評判のいい産婦人科を検索してみると、ちょうどマンションと職場の保育園の中間に、篠宮総合病院という大きな病院があった。

早く怜士に知らせたいけど、彼は今ワークショップの準備が佳境で忙しい。まずは確定してからにしよう。

産婦人科に電話をすると、明日の午後に初診の予約が取れた。

早番終わりに病院に行ったあと、夜にゆっくり打ち明けて、ふたりで喜び合いたい。

その日、逸る気持ちを抑え、帰宅した怜士に明日の予定を聞いてみた。

「明日も今日と同じくらい遅くなる?」
「いや。前日くらいは早く帰ろうって、今日あらかた終わらせてきた」
「本当?」