あのあとだ。

奏雨が男子と関わらなくなったのは。

まあ、関わることを許されなかったと言った方が正しいのかも知れないけれど。

どちらにしても今まで見たことのない奏雨の姿に、安心というには簡単で、ほっとしたと言うには足りない。
なにかこう、あたたかい何かが流れ込んできた。


「奏雨、そんな所に立ってないで、こっちおいで?」


自然と笑みがこぼれる。
子供の頃に戻ったような気分だ。

これで奏雨がここに来て話をしたら、これからもここに寄ってくれることが増えるかもしれない。
もしかしたら花暖先輩との仲も今よりはいいものになるかもしれない。

……何より奏雨自身に、なにかいい変化があるかもしれない。

期待が膨らむのを抑えながら、手招きをする。


「わ、私……急用ができたから、先に帰っ……」

「送るよ」

「ふぁっ!?」


奏雨の声に驚いたからじゃない。
奏雨の名前を優しく呼んだだけじゃなく、立ち上がってそんなことを言うから。

あの、タマキ先輩が。

え、え。


「それなら今日はこれくらいで終わりにしようか」

「そ、そうだね!! 環くん、乃奈香ちゃんのことも送っていってくれるでしょ?」

「もちろーん。いつもそうしてるしな。お前らは気を付けて帰れよ」

「あは、環くん相変わらずお父さんみたい」