「……あれ?」
さっきまで新撰組メンバーの名前を唱えていた小池先輩が、何かに気付いたように声を出す。
声の先を追うより早く、風鈴のような声が名前を呼んだ。
「奈冷」
腰まで伸びた綺麗な髪をなびかせ、柔らかい笑顔で手を振ってくる。
「奏雨」
慣れたように優しい声で奏雨の名前を呼んだのは、俺じゃない。
俺の向かい側に座る先輩だ。
「っ」
こちらに向かって進んでいた奏雨の足が急に止まる。
そして、みるみる顔が赤くなっていくのを隠すみたいに自分の鞄を口元まで持ってくる。
奏雨のそんな様子を見たのは初めてで、俺は何度かまばたきを繰り返した。
同時に、以前花暖先輩に聞かれたことを思い出す。
――『ねえ、奏雨ちゃんって男の人が苦手なの?』
聞かれたときは、その質問の意図を理解することはできなくて。
子供の頃を思い出し、苦手と言うよりかは関わり方を知らないだけだと思っていた。
だって奏雨が男子と関わっている所をほとんど見たことがなかったから。
そして今日。
奏雨が近所の男子にいじめられていた日のことを思い出した。
さっきまで新撰組メンバーの名前を唱えていた小池先輩が、何かに気付いたように声を出す。
声の先を追うより早く、風鈴のような声が名前を呼んだ。
「奈冷」
腰まで伸びた綺麗な髪をなびかせ、柔らかい笑顔で手を振ってくる。
「奏雨」
慣れたように優しい声で奏雨の名前を呼んだのは、俺じゃない。
俺の向かい側に座る先輩だ。
「っ」
こちらに向かって進んでいた奏雨の足が急に止まる。
そして、みるみる顔が赤くなっていくのを隠すみたいに自分の鞄を口元まで持ってくる。
奏雨のそんな様子を見たのは初めてで、俺は何度かまばたきを繰り返した。
同時に、以前花暖先輩に聞かれたことを思い出す。
――『ねえ、奏雨ちゃんって男の人が苦手なの?』
聞かれたときは、その質問の意図を理解することはできなくて。
子供の頃を思い出し、苦手と言うよりかは関わり方を知らないだけだと思っていた。
だって奏雨が男子と関わっている所をほとんど見たことがなかったから。
そして今日。
奏雨が近所の男子にいじめられていた日のことを思い出した。