「そ、ソーダ味!!」

「ふーん……じゃあ俺もそれにしよ」


フッ、と優しく笑う雪杜くんに、一気に全身に血が巡った。
頭はすでに沸騰している。

奏雨ちゃんから話を聞く度に、雪杜くんは子どもの頃から意外と変わっていないんだなって嬉しくなる。

けど、それでも、変わったところだって少なからずある、と思う。

たとえば、こんな笑顔を向けてくれるのは、きっと私にだけ……だし。
目上の人には必ず敬語を使うけど、タメ語で話してくれるのも、私が彼女だから、で。

手を繋いだり、キスをしたり。
……この先、それ以上のことをするのだって、私とだけ。

そう思ったら、心臓が少し、ぎゅうっと締め付けられた。


愛しくて、好きで、大好き。



「そういやユキメ後輩、そのサツキって奴からの嫌がらせはどうなったんだよ」


乃奈香ちゃんからもらったタオルで首元を拭きながら、思い出したように信濃くんが皐月さんの名前を出した。

途端に、さっきまでご機嫌そうだった雪杜くんの表情に一瞬だけピシッとヒビが入る。


「……別に、あれから特に何もされてませんよ」


あの病院での一件以来、私は皐月さんに会っていない。
私も皐月さんのことが気になって雪杜くんに聞いたことがある。

今みたいに少し嫌そうな顔をしながらも、「たまに、会ってる」と言ってた。
参考書を借りたり、皐月さんのお父さんに話を聞いたりしてるらしい。

そういえばあの患者さん。
あのあと無事に回復されて、退院の話も出ているようだった。
雪杜くんのご両親も海外に戻られたそうだ。

長い間診てきた患者さんもやっと良くなってきて、余裕も出てきたおじさんは、家に帰ってくる回数が増えたみたい。

この間奏雨ちゃんが嬉しそうに話してくれた。