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「助かりました……」

「これで飴ちゃん1個分返したからな」

「あは、もう十分すぎるくらいだよ」


信濃くんに案内していただいたおかげで、無事にバス停に着いた。
バスが来るまでの間一緒に待っててくれるというのでお言葉に甘えて話し相手になってもらっている。

それにしても、今日の私はいろんな人に助けてもらってるなあ。

助けてもらったときは感謝の気持ちで溢れていたけど、少し時間が経つとやっぱり申し訳ない気持ちも湧いてくる。

また会えるかなあ。
もし会えたら、今度はなにかお返しできたらいいな。


「それ、ユキメ後輩に?」

「え、うん」


紙袋からちらっと見えている花束とフラワーアレンジメントを見て、信濃くんは「やるじゃん」と褒めてくれた。

もしも今隣にいるのが信濃くんじゃなくて環くんだったら、色々ダメ出しされていたんだろうな。
何を隠そうあの人は芸術家だもの。


「確かにユキメ後輩の家、ガランとしてて寂しいもんな」

「そう、そうなの。だからこれで少しでもお家が明るくなったらいいなって」

「へえ、カノの割に考えたじゃん。ユキメ後輩、きっと喜ぶと思うぜ」


ニッと白い歯を出して笑う信濃くんに、不覚にもドキッとしてしまう。
雪杜くんごめんなさいと心の中で土下座をしてから、私も笑顔でうなずいた。

以前のようなギクシャクとした雰囲気は全く感じない、やわらかくて楽しい時間。
またこうして楽しく話せるようになったのがこんなにも嬉しかった。