「内緒にしてネ? あともうそろ泣き止んでくれると嬉しいにゃ」


自分で花を選ばせてくれて、束ねさせてくれて、手伝ってくれて、おまけまでしてくれて。
いったいどこまでいい人なんだろう。

ぼろぼろと大粒の涙を流す私を見て、店員さんはおかしそうに「くふ」と笑った。

その笑顔にきゅうっと苦しくなりながらも、持っていた花束のうちの一束(ひとたば)を店員さんに差し出した。


「あ、あの……これ」

「……はて」


こてんと首を傾げる店員さんはどことなく雪杜くんと雰囲気が似ている。
飄々としているけれど、どこか儚いものを内に秘めているような。


「今日は本当にお世話になりました!! 店員さんの元にも、幸せが訪れますように!!」


お花屋さんの店員さんに花束を渡すなんてどうかしている。
余計なお世話だ。

そんなの全部わかっているけれど、止められなかった。
だって他でもないこの店員さんが教えてくれたんだもの。


「え、でも……」

「『花を渡す時に、伝えるのが吉』なんですよね?」

「…………くふ」


「ありがとう」と、店員さんの口元がほころんだ。
それにつられて私まで笑顔になる。涙だってもう引っ込んだ。


最後まで不思議な時間だったけれど、私にとってなにかとても大切な気持ちが芽生えたような気がする。

雪杜くんもあんなふうに笑ってくれるといいな。