目で追う文字が滲んで、最後まで読めなかった。手紙の返事をもらえるなんて、思いもしなかったから、手が震える。

 夢の中にでもいるようで、実感が湧き始めたのは、三週目に読んだあたりから。
 これまで保管してあったメッセージの上に、新しく手紙が増えた。宮凪くんからの、ラストレター。

 いつも使っていたパステルブルーの便箋を取り出して、私もペンを握る。

 奇跡の手紙に、返事を書くため。


***

 宮凪(みやなぎ)(かい)くんへ

 一年ぶりですね。
 高校二年生になって、真木さん以外の友達ができました。同じ学校では、初めての友達です。

 読書が好きな子で、物語を書いているみたいです。
 この前、少しだけ読ませてもらったら、とても素敵で引き込まれました。
 私も、宮凪くんに自慢できるような、なにか没頭できるものを見つけたいな。

 それから、今年も蛍がきれいです。
 また一緒に見ようね。

              春原(すのはら)蛍より


 毎年、八月。
 宮凪くんの命日に、思い出の河原を訪れる。

 月明かりに照らされた川へ手紙を流すと、しばらくしてきらきらと水面が輝き始めた。


 約束の蛍が、空へ舞い上がっていく。
 私たちの想いを、光りに乗せて。
 

                   完