だんだんと(のど)の奥が開き、伸びやかに声が出た。
 練習では上手く歌えなかったところが、今はみんなとひとつになっている。

 間奏が終わり、眞柴さんのソロパートへ入ったとたん、歌声が消えた。私たちも、客席もどうしたのだろうとそわそわしている。

 声が聞こえないと知ってか、ピアノの伴奏まで止まってしまった。シーンと静まり返る会場で、今にも泣き出しそうな眞柴さんが見える。

 一生懸命歌おうとして、掠れて出ない声。その光景が、宮凪くんと重なった。


『一緒の、高校……行こう。……約束、たくさん、あった方が、頑張れる……気がする』


「……たとえ〜離れていても 心はひとつ〜 僕らの時間は 色褪せない〜」

 気づいたら、私はソロパートの部分を歌っていた。
 追うように伴奏が流れ始める。合唱は、何事もなかったように再開して、大サビの部分で大迫力の盛り上がりを見せた。

 涙をこらえながら、必死に歌い続ける。
 もっと歌いたかった宮凪くんの分まで、空へも声が届くように。

 途中のハプニングはあったものの、聖薇女学院の合唱はエンターテイメント性があったと高評価をもらえた。