はっきり返事をしないうちに、お母さんは一階へ降りて行った。
 真木さんと学校で話すようになって、他の人たちとも少しながら交流が生まれた。ミニコンサートで奇跡を起こしたと思っていたけど、現実を突きつけられて自信は消失している。

 宮凪くんは、もういない。

 願った神様は、──いなかった。

 私なんかいない方が、合唱コンクールは上手くいく。そのとき、スマホが鳴った。テロップで出てきたのは、SNSの投稿通知だ。
 そんなはずはない。止まりそうな心臓音を抑えながら、そっとタップする。

《合唱コンクール みんなガンバレ! 天王も星薇もガンバレ! 俺もガンバレ!》

 あふれる涙で、文字が見えなくなっていく。

「……宮凪くん……なんで……?」

 うずくまる体を、ハッと起き上げた。
 そうか、予約投稿だ。きっと、宮凪くんは忘れないように、事前に書いていたんだ。

《ほたる ガンバレ》

 ピコンと更新された文字に、また目の前がにじみ出す。
 どうして、私の名前が……。
 まさか、私が合唱コンクールに出ること、宮凪くんは気づいて……?

 涙まみれの顔をこすりながら、ベッドから飛び降りた。
 姿見の前に立って、一度、深呼吸をする。

「……ほたる、ガンバレ」