何日かぶりに机へ向かって、手紙を書いた。伝えきれなかったこと、話しておきたかったこと。文字にすると不思議と心が落ち着いて、少しだけ体が軽くなった。
 足が進まなかった学校へも、徐々に通えるようになった。受験生があまり休んでいてはいけないと、気を引き締めることにして。


 一ヶ月が過ぎた九月の終わり。布団の中にくるまって、朝を迎えた。

「ほたる〜、起きなくていいの? 遅刻するよ〜?」

 階段を上がってくる音がして、ギュッと目をつむる。

「今日、合唱コンクールでしょう? どうしたの? 具合でも悪いの?」

 部屋へ入ってくるなり、お母さんは急かすような口調で、私の横へ腰を下ろした。
 せっかく登校できるようになったと思ったのに、またこの様子では無理もない。

「……お腹……痛い」

 締め付けられるような腹部を押さえて、小さな声を出す。嘘じゃない。本当に痛くて、つらいの。

「蛍、お友達のこと……お母さんも残念だと思うし、ショックなのもよく分かるわ。でも、いつまでも、ふさぎ込んでるわけにはいかないのよ」

 布団ごしに伝わる手が、背中をゆっくりさすってくれる。
 お母さんの言いたいことは、理解しているつもりだ。

 頭ではわかっていても、心がついていかない。数秒前まで大丈夫だったことが、次の瞬間には無理になることもある。

「夜いつも練習してたじゃない。本当に、お休みでいいのね?」