「一緒の、高校……行こう。……文芸部、入って、図書館生活も、悪くないな。そしたら、もっと、一緒にいれる……だろ」

 耳元でやっと理解できるほどの声に、胸の奥がギュッと狭くなる。前とは、かけ離れて違うけど、間違いなく宮凪くんの声だ。

「もう、話さないで。ほんとに、出なくなっちゃう」

 どうかこの温もりが消えないでと、背中に添えた手に力を入れる。

「ナイト、アクアリウム……今度は、ちゃんと、予約するし。本物の、蛍も……見よう。約束、たくさん、あった方が、頑張れる……気がする」

 差し出される小指に、そっと体を離す。
 絡め合う指先は、熱を帯びた宝石のように美しくて温かい。

 見上げたとたん、濡れた頬に優しいキスが落ちてきた。
 その瞬間に、夜空はパッと明るくなって、大きな音が鳴り響く。何度も光りながら、たくさんの花火が打ち上がっている。

「……約束……、ぜったいだよ」

 指切りをした手は、そっと離れた。


 私は、嘘をついた。
 立派な友達だと口にしたけど、ほんとうは違う。それ以上の感情を持ち合わせて、宮凪くんに恋をしている。

 本心を言わないのは、願掛けでもあった。一緒に高校へ通うことになったら、告白しようって。