ミニコンサートが成功してから、宮凪くんと普通に会えるようになった。と言っても、退院できたわけではなく、お見舞いへ来ているという意味だ。
 肌の光りが消える時間は、前よりずっと遅い。何時間もそのままで、その日の体調によっては半日以上続くこともある。

「ゴホッ、ゴホッ──」
「大丈夫? 水飲む?」
「……ありがと。平気」

 吹奏楽部の演奏で歌を披露してから、八日目のこと。たまに掠れていた宮凪くんの声は、ほとんど聞こえなくなっていた。

 病室の窓から外を眺めていると、トントンと肩をつかれる。

《ホタル なに見てるの?》

 ノートにつづられた文字に、キュッと胸の奥が締め付けられた。

「小鳥がね、木に止まってるの。見たことない鳥だったから、気になって」

 平然を保って、視線を外へ向ける。
 悲しいと、顔に出したらいけない。一番つらい思いをしているのは、宮凪くんだから。

《どれ?》

 近くなって、肩がぶつかった。すぐとなりにいるのに、声は聞こえない。

「ちょっと青っぽい……あの鳥。キレイな色だよね」

 指をさしたところを見て、見つけたのか宮凪くんもうなずいている。

《幸福の鳥?》

 いつもと変わらない笑顔があって、私は押し寄せてくる涙をグッとこらえた。

「うん、そうだよ。絶対そう! お見舞いに来てくれたんだね、きっと」

 クスッと笑って、宮凪くんが前へ向き直る。その表情がどこか寂しそうで、何も言えなくなった。
 私の些細な感情が、不安が、にじみでて伝わっていませんように。