不安定な音を立てながら、カーテンを開けると、点滴の管が繋がった宮凪くんがいた。

「……蛍? なんで」

 足がすくんで、何度も唱えていたはずのセリフは出てこない。向けられているのが、驚きに加えて拒絶するような目だったから。

「あの……すごく、心配で」
「帰って」

 ベッドの上に横たわる宮凪くんは、力ない声を吐いた。視線を窓の外へ追いやって、目も合わせようとしない。

「勝手に、ごめんなさい。どうしても、また会いたくて」

 線の細い声が、さらに震えて聞こえづらくなる。網膜を覆おうとする水の膜をぐっと堪えて、渡すタイミングを失くした紙袋を握りしめた。

「友達ごっこはもう終わり」
「えっ?」
「もしかして信じちゃってた? 今までのは、ぜんぶ暇つぶし。死ぬまでにデートしてみたいとか、んなわけねぇじゃん。君はどんくさいから、気付かねぇか」

 ハハッと呆れたように、宮凪くんが口を(つぐ)む。背中から伝わる冷たい空気に耐えきれず。

「……嘘、だよね?」

 意味のない問いかけをして、少しでも傷口を抑えようとする。むしろ、広げるだけだと分かっていても、素直に受け入れられない。

 あんなに優しく触れた指が、言葉も全て偽りだったなんて、信じたくない。

「嘘じゃねぇよ。もう話すことないから、帰れ」