思い出したのか「ああ」とつぶやいて、宮凪くんがハハッと笑う。

「いい曲だろ?」

 素早く二回うなずいて、少し頬がゆるむ。
 よかった。いつも通りの宮凪くんだ。

「歌詞はよく分からなかったけど、曲調が素敵だった。心に染みるっていうか。声もキレイで、びっくりしちゃった」
「だよな! 静けさの中に強さがあって、すげぇ響くんだよ。あれ、親友のために作られた曲なんだけど」

 となりを歩きながら、うんうんと話を聞く。
 宮凪くんがこんなに熱くなっているところ、初めて見たかもしれない。本当に歌が好きなんだな。

「……なんかごめん。ちょっと一人で喋りすぎた」

 橋を渡り終える頃、やってしまったという顔をして、宮凪くんが口をおおった。恥ずかしそうに顔を隠しながら、そっぽを向く。

 そんなことはない。逆に新たな一面を知れて嬉しいと話したけど、上手く伝わらない。遠回しなニュアンスがよくなかったのかな。


「ゴホッ、ゴホッ──」

 いきなり、宮凪くんが咳き込んだ。
 止まらなくて、とてもつらそう。背中をさすったり、なにかしてあげたいけど、できるわけない。

「だ、大丈夫? 風邪……?」
「ちょっと、むせただけ。たまに、急にあるんだ。もう平気」

 そう宮凪くんは呼吸を落ち着かせて、カバンから取り出したペットボトルのフタを開けた。
 ゴクゴクと動くのどぼとけの形がキレイで、またドキドキする。

 ──あれ? 水を飲んでいるのに……。

「光ってない」