聴き覚えのあるメロディーが流れてくる。
胸を締め付ける、柔らかくて繊細な音。このサビ……、前に宮凪くんが口づさんでいた歌と似て──。
ポロリと、見開いた瞳から涙が伝う。
宮凪くんが、泣いてる──?
「蛍、行こう」
すぐに雫は拭われ、私は知らない素振りをした。見てはいけなかった気がして、胸が騒ぐ。
引かれた手。宮凪くんの手の甲は、青くキラキラとしている。
私たちは、足早にその場を離れた。
いつもは通らない道を進んで、小さな橋の上を歩く。繋がれた手が、静かに離れた。名残惜しそうにする指先は、ドキドキしたままの胸の前へ戻る。
「急に、ごめん」
「ううん」
「大丈夫?」と言いかけた口を閉じた。踏み込んではいけない気がして、聞けない。
なにか話さないと。それだけが、頭の中をぐるぐると回っている。
「……あの歌って、有名なんだね。私、全然知らなくて」
「そんなに。知ってる人の方が少ないと思うよ」
「そうなの? 宮凪くんも歌ってたから、てっきり……」
「え、俺?」
不思議そうに見られて、思わず体が固まる。心なしか、歩幅も小さくなった。
変なことを言ったかもしれない。顔から、一気に血の気が引いていく。
気持ち悪いと思われたのかな? なにげなく口づさんだ歌を覚えていたなんて、ホラーだよね。
「公園のときの! たまたま、メロディ覚えてて。印象に、残ってたというか」
なんの弁解にもなっていない。場所まで付け加えて、気味悪さをプラスしただけだ。
いつものことながら、自分のコミュニケーション能力の低さに涙が出る。
胸を締め付ける、柔らかくて繊細な音。このサビ……、前に宮凪くんが口づさんでいた歌と似て──。
ポロリと、見開いた瞳から涙が伝う。
宮凪くんが、泣いてる──?
「蛍、行こう」
すぐに雫は拭われ、私は知らない素振りをした。見てはいけなかった気がして、胸が騒ぐ。
引かれた手。宮凪くんの手の甲は、青くキラキラとしている。
私たちは、足早にその場を離れた。
いつもは通らない道を進んで、小さな橋の上を歩く。繋がれた手が、静かに離れた。名残惜しそうにする指先は、ドキドキしたままの胸の前へ戻る。
「急に、ごめん」
「ううん」
「大丈夫?」と言いかけた口を閉じた。踏み込んではいけない気がして、聞けない。
なにか話さないと。それだけが、頭の中をぐるぐると回っている。
「……あの歌って、有名なんだね。私、全然知らなくて」
「そんなに。知ってる人の方が少ないと思うよ」
「そうなの? 宮凪くんも歌ってたから、てっきり……」
「え、俺?」
不思議そうに見られて、思わず体が固まる。心なしか、歩幅も小さくなった。
変なことを言ったかもしれない。顔から、一気に血の気が引いていく。
気持ち悪いと思われたのかな? なにげなく口づさんだ歌を覚えていたなんて、ホラーだよね。
「公園のときの! たまたま、メロディ覚えてて。印象に、残ってたというか」
なんの弁解にもなっていない。場所まで付け加えて、気味悪さをプラスしただけだ。
いつものことながら、自分のコミュニケーション能力の低さに涙が出る。