厚壁に隠れながら、声のする方を盗み見る。目に飛び込んで来たのは、服を半分脱がされて、水を浴びせられている宮凪くんだった。

 綺麗な髪から滴る水が、青く光る肩と腕に落ちている。

「カイの体すごくね? どうなってんだ、これ」
「宝石みたいじゃん。SNSにアップしたらバズるかも!」
「早くスマホ出せって」

 俯いたまま、宮凪くんは何も反応しない。あきらめているのか、気力が見受けられない。目は死んだ魚のようで虚としている。

 ──蛍が見てる世界を、俺も経験してみたいなーって。

 優しく笑いかけてくれたあの頃を、宮凪くんを返して。

 飛び出した足は、一直線に宮凪くんの腕を取り、重く沈んだ腰を引き上げた。

「……ほた……る?」
「は、早く、帰ろ」

 ぐいぐいと引っ張りながら、明るい光のある方へと進む。

「えっ、ちょっと、なにお前?」

 後ろから威圧感ある女の子の声がして、心臓が縮み上がる。振り向かないで走り出すと、我に返ったように宮凪くんも足を急がせた。

「待てよ、こら! おい!」

 追いかけてくる高校生たちから逃げながら、服を着て光を隠す。「こっち」と手を引かれたとたん、するりと抜けて、ぐわんと体が後ろへ倒れた。

「……てめぇ、なにしてくれてんだよ!」