騒がしかった周りが、一瞬だけ静まった。それほど大きな声ではなかったけど、力強く言ったから。
 驚いた表情をすぐに戻して、沢井さんは乾いた笑いを吐く。

「春原さんのこと思って教えてあげたのに。まわり見えてなさすぎ」
「もういいじゃん。うちらには関係ないし」

 彼女たちの後ろに立っていた真木さんは、行こうと腕を引っ張られ、何も言わず去っていった。
 嫌われただろうな。でも、宮凪くんを悪く言われて、我慢出来なかった。

 ──蛍が見てる世界を、俺も経験してみたいなーって。

 優しく笑ってくれて、知られたくない秘密を打ち明けてくれた。
 宮凪くんは、誤解されやすいのかもしれないけど、嘘をつく人じゃない。


 放課後の合唱練習の前に、三浦先生からオーディション結果が発表された。当たり前のように落ちたと思っていたけど、代表として私たち三組が選ばれたらしい。

 思いの外、みんなは嬉しそうにしていた。もちろん、三浦先生がぶっちぎりでテンションが高かったけれど。

 私は素直に喜べなかった。心のどこかで、選ばれなければいいと思っていたから。
 そんな醜い自分と、今朝の宮凪くんの事が折り重なって、一ミリも笑えなかった。