何度か手紙の交換をするようになって、朝が楽しみになった。お互い顔も本名も知らない。だけど、歳は同じで話しやすい。
 字がきれいだから、私の中では勝手にお姉さんのようなイメージを持っている。


《そういえば、ホタルはどこ中なの?》


 返ってきた質問に、ペンを持つ手が止まった。
 言わないといけないかな。あまり知られたくない。

 ナイショと書きながら、どこか不安になる。この返答は、気分を害すかもしれないって。

 紙一枚で繋がった友情なんて、いつ壊れてもおかしくない。相手に不信感を抱かれたら終わり。
 お互いに顔も名前も知られたくないから、間接的に話しているのに。

 それでも、会ってみたい気持ちが強くなってきた。それは、最近の彼女からも感じられる。

 聖薇(せいら)女学院中学は、この辺りではお嬢様学校と呼ばれている。お嬢様と聞くと、品よくお茶でも嗜むイメージだけど、実際のところは違う。

 蓋を開けたら、普通の女子中学生と同じ。暑ければ下敷きでスカートの中を仰ぐし、下品なことも言う。

 大人しい子ばかりなら、仲良くなれる。そんな軽率な考えは、どこの学校へ通っても上手くいかなかっただろう。

 自分から話しかける勇気のない私は、気付けばみんなを遠ざけて孤立していた。