夢中で走って、たどり着いたのは小さな河原。周囲からの光もほとんどなく、殺風景な場所だ。
 不安になりながら、さらに奥へ進む宮凪くんの背中を追いかける。テトラポットの上を歩いて、砂利を踏む。

 さっきは暗くてよく分からなかったけど、ここの石は白い。祖父と見た景色と、少し似ている気がした。
 握られていた手が離れて、温もりが消えていく。

 もうちょっと触れていたかったな。そんな恥ずかしい感情が込み上げて、ぶるぶると振り払う。

 何考えてるの、私。おかしいよ。

「蛍、こっちだよ」

 気付くと宮凪くんは川のすぐ手前にいて、素足の横にスニーカーが置かれていた。
 そのまま入って行く宮凪くんに「待って」と声を掛けるけど、止まる気配はない。
 川は急に深くなると言うし、夜はさらに危険。何をするつもりなの?


 まさか──。

 とっさに駆け寄ったから、靴を脱ぐ余裕もなくて、靴下のまま飛び込んだ。それを見て、宮凪くんがぎょっとした顔をして、私の肩を掴む。

「──なにしてんの⁉︎」
「だ、だって、宮凪くんが……」

 死のうとしているのかと思った。その言葉を飲み込んだ時、不思議なものが目に入る。
 青い光がきらきらと現れて、宝石のように輝き始めた。水面ではなく、発光源は宮凪くんの足と手のひら。

 水に触れた部分だけ、電気を装飾したみたいになっていた。