ゼロかイチか程度の声を出して、合唱の練習を終えた。私にはハードルが高すぎて、天井を突き破るのは無理だった。

「みうらっち、気合い入ってるよねー」
「代表に選ばれなかったら、発狂するんじゃない?」
「でもさ、さっすがフミちゃんだよ! さっきのソロパートすごかった」
「クラスに合唱部が三人もいるって、なんか得した気分だよねー」

 後ろの席でキャッキャッと盛り上がっているのは、陽気な女子代表とも言える沢井(さわい)さんとその仲良しの二人だ。

 黙っているけど、真木さんもいる。女子たちの微妙な声のトーンで、誰と話しているかわかってしまうのだ。

「あれはないわー」と言いながら、小さく内緒話をしてクスクスしている。私のことじゃないかもしれないけど、笑われている気がして落ち着かない。

 さっき褒められていた、合唱部の眞柴(ましば)ふみさんは、他の子たちと気まずそうに席へ戻っていく。

 逃げるように、私は教室を出た。
 あの時と同じことを繰り返している。小学生から、何も変わっていない。