キッチンへ行き、鍋にお湯を沸かし始めた。

お茶の葉から用意するなんて、私としてはよくやるようになったなと思う。
お茶はいつもペットボトル。ご飯もレトルトか、コンビニ弁当。
そんな生活だった。

だけど洸さんが来るようになってからは、きちんと料理をするようになった。
彼の家では、イタリアンとかフレンチとかが食卓に並ぶことが多いというから、私はできるだけ和食中心に作るようにしている。
美味しいとも不味いとも言わない洸さん。だけどちゃんと食べてくれるのが嬉しい。

私はお茶の陶器を持って、彼の前に置く。
そして私自身も彼の前に座って、やっとここでご飯を食べる。
彼が家に来てくれるのが嬉しくて、ご飯はそんなに入らない。
胸いっぱい。反してご飯はちょっぴり。これが私の幸せのカタチ。



「あの、西と申します。チャペルでフリューゲル吹いてた……」

洸さんに連絡を入れたのは、出会ってから3日後のことだった。

実家から生活費等々の仕送りはあるものの、お金はどれだけあっても困らない。
しかも、好きな楽器を吹いて賃金を得るというのは、まさに一石二鳥だった。

『ああ、結婚式の。西さんっていうんだね。そう言えば名前聞いてなかった。なにちゃん?』