洸さんの身体は堅く、反して私は蕩けるように柔らかく変化していった。



出会いは、結婚式だった。

洸さんの結婚式ではなく、大学生である私の結婚式なんかでもない。
私は、楽器演奏を得意としていて、チャペルの音楽隊のバイトをしていた。
市の郊外にある、ハイソなホテル。そこには大きな白い教会があって、結婚式が毎週と言っていい程執り行われる。
教会の周りには芝生の庭が広がり、天気のいい日は外でガーデンパーティができる。

式の最中は、弦楽器と教会備え付けの大きいパイプオルガンが流れ、私の役目はというと、結婚式で愛を誓いあい、教会から出てきたほやほやの新郎新婦の門出を祝う、ファンファーレを演奏する楽隊のひとりだった。

楽器を演奏しながらも、フラワーシャワーを浴びる新夫婦を見ながら、幸せでいいよね、と思う。

このバイトで、いくつものカップルを見てきたけれど、ここから順調に生活を送っている夫婦はどれくらいいるのだろう。
結婚式は単なるイベントに過ぎないという。そこからは理想とかけ離れて行く現実があると。

私、西澄花は大学生。彼氏もいなけりゃ、卒業後の進路も見通しが立っていない。結婚なんてまだまだ遠い先の話だ。

私は小楽曲を吹き終えると、ゲストたちの祝福の拍手に包まれたその平凡で幸せそうな新郎新婦が、お色直しの為に開け放たれたテラスへと入っていくのを見、楽隊皆で一礼をしてその場を去ろうとした。