何よりも、私の方が若い。

洸さんは奥さんと真逆なタイプの私を選んだんだろうな。ってか、私の方が好みだったりするのかもしれない。

いつもこころに浮かんでいた優越感を、また別の形で覚えていた。

洸さんをイケメンだという、朝香に対しても。



「小泉さま、奥様、お食事は何時頃にいたしましょうか」

着物を着た初老の仲居さんが、お茶を淹れてくれたあとに、正座をして向き直った。

「じゃあ、7時で」
「承知いたしました。ではごゆるりと」
「少しばかりですが、お心づけです」

白い紙に包まれたものを、洸さんは仲居さんに渡す。

「あら、まあ。ありがたく頂戴したします」
深々とお辞儀をして、仲居さんは微笑んで部屋を出て行った。

「心づけって、なぁに」
「チップのことだよ」

温泉旅館なんていつ以来だろう。家族で行った思い出もあるけれど、それはまだ私がちいさかった頃だ。だから、日本でも、しかも温泉地でチップなんてもの渡すのか、やっぱり洸さんは社会人で、大人だなぁ、と感心していた。