私もどぎまぎしながら一礼をする。洸さんてば機転が利く……。

「いたいた、澄花―? 急に立ち止まってどうしたのー?」

朝香は私に気づかずに数歩先を歩いていたところ、戻ってきた。
「ではまた」
「はい」

去り際に洸さんがウインクをする。私だけがそれに気づいた。そして秘密を共有しているようで、少し興奮した。

「ってか今の誰? 背高いし、ちょっとしか見えなかったけどイケメンじゃない?」

鼻息荒くして、朝香が洸さんの遠ざかる背中を見ていた。

「バイト先の知り合い」
「もしかして新たな恋の予感? でも隣に女のひといたよね」
「奥さんだよ」

初めて見た、洸さんの番(つがい)。

ちいさくて、髪の毛はくるくるとカールしていて、ばっちりお化粧も綺麗なひとだった。
だけど、髪の毛は天パなのか、前髪までうねってたし、マスカラばしばし、眉毛もあからさまに描いていた。

私はストレートの黒髪で、お化粧も薄くファンデーションを塗るだけ。眉毛はメイクを落としてもまろ状態になることはない。