そんな提案を受けていた。

ひょっとしたら、洸さんが求めているのは私じゃなくて、私の身体だと思い始めていたからだ。
だから、旅行の話は天にも昇る思いだった。誘われてからずっと浮足立っていた。

今もふわふわしている。

だから、ぶつかってしまった。

背の高い男のひとの腕と、私の肩が。

「あ、ごめんなさ……」

最後まで言葉が出なかった。そして私が思わず立ち止まると、彼も立ち止まった。

「洸さ……小泉さん!?」

その脇に女のひとがいたから、咄嗟に名字に言い直した。

だけどそれもまずかった。洸さんの隣にいた奥さんらしきひとが、怪訝な表情を浮かべて私と洸さんを交互に見ている。

「やあ、西さんのお嬢さん」
洸さんは狼狽える様子もなく、余裕の笑みさえ浮かべている。

「住宅ローンの融資の件で、俺担当でさ。何回かお宅に伺ってて。そのお嬢さん」
「あらまあ、いつも主人がお世話になっております」

小柄な奥さんが深々とあたまを下げる。そう、洸さんは銀行マンだ。

「いえ、こちらこそ」