外はお日様の光で眩むくらいに日常が営まれている。
だけどここは、朝でも電気を点けなければならないほどの非日常の空間。

5月も終わりの、土曜日。朝10時。

私と小泉洸(こいずみ・こう)さんは、お揃いのバスローブを着て、ゆったりとソファにもたれかかっていた。

今しがた、彼の車で郊外のこのラブホへ吸い込まれ。そして各々の日常の澱を落とすかのように、シャワーで身体を綺麗にした。
洸さんは、奥さんに外で水を浴びてきたことを知られない為に、シャワーではシャンプーもボディソープも使わない。
だから、余計に肌を合わせた時は彼自身の香りを直に感じる。

今は、部屋のなかに、少しだけクーラーを入れ、その吐き出される空気がふたりの熱情を平温に保っている――今は、まだ。

とりあえず乾杯、と洸さんがコルクを引き抜いてくれた赤ワイン。それを部屋に備えてあったワイングラスに注いでくれ、ふたり、グラスをかちりと合わせる。
ここに滞在するのは午後7時までだから、それまでには車を運転する洸さんのアルコールも抜けているだろう。

ぐい、と洸さんが液体を口に含む。私も同じようにぐい、と飲む。